あなたの耳に、不気味で妖しい闇話を

女流怪談師山口綾子。

可憐で、時に妖艶なその見た目からは想像だにしえないほど、情感豊かに語られる深く黒い闇の話の数々。

あなたの身の回りにもある、人知れず存在している数々のイビツに切り取られた風景に浸っていただきたい。

内容紹介

『夢』(29分)

人から人へと語り継がれてきた、ある夢の話があった。―あなたは夜の海辺を歩いていると、探し物をしている一人の老婆を見つけた。あなたはその老婆に声をかけた。振り返った老婆の顔を見て、あまりの恐ろしさにあなたは震え上がる―この物語は、この夢を見た一人の男性の体験談から始まっていく。話の続きは、今夜眠りについてからご自身でお確かめください。

『女子高生』(8分)

私が立っていたのは、知らないマンションの玄関ホールだった。そこには他にも人がいて、その人と一緒に四階へと階段を上って行った。＂四階に行かなければ＂という、根拠のない義務感に囚われていたのだ。そこに待ち受ける恐怖をまだ知らない私たちは、足の進むままに廊下を歩いて行ったのだが…。何気ない日常の中で、あるとき突然、あなたも異次元に迷い込んでしまうのかもしれない。

『伝言ゲーム』(11分)

その女子高生が転校した女子高のクラスでは、席替えで一番前の席を望む生徒が多かった。その理由は、生徒の間で密かに流行っていた、恋が叶うと噂されている＂伝言ゲーム＂をするためだった。ある日、一番後ろの席で授業を受けていた彼女に、前の席の生徒から伝言ゲームの伝言が回ってきた。しかし、その内容は、信じられないものだった…。きっと誰も聞いたことがない、学校にまつわる怪談話。

『許さない』(12分)

翔くんには当時、年下の彼女がいた。嫉妬深い彼女は、「浮気したら絶対に許さない」というのが口癖だった。そんな彼女の誕生日にあるホテルに宿泊することにした二人だったが、受付で渡された部屋の鍵は、希望の部屋とはまるで違う部屋のものだった。廃墟にも似たその部屋は、とても同じホテルの中にあるとは思えない程荒んでいた。怒った翔くんは受付に文句を言い、別の部屋を用意してもらったのだが…。ホテルの部屋が物語っていた恐怖の真実とは。

『生命の泉』(12分)

久しぶりに、知り合いの男性である東さんに再会した私は、その変貌ぶりに驚いた。東さん曰く、変わったのにはある＂個展＂を訪れたことが関係しているのだという。その個展には、『生命の泉』という題の女性の身体の一部を再現した作品があったそうだ。東さんは、出来心からついその作品に触れてしまった。『生命の泉』にはご利益があると喜ぶ東さんだったが…。

『祠』(12分)

福岡県の某所にある団地に住む和弘くんはその日、帰り道に、団地の裏手にある病院の患者さんが、あるモノを見て叫んでいるところに遭遇した。それは、近くにある祠にお参りに来ていた夫婦だった。「そんなことをしても意味がない！」―患者さんが叫んでいる理由は、わからなかった。後日、またも同じような光景を目にした和弘さんだったが…。祠に隠された、ある恐ろしい歴史とは。

『撮影モデル』(5分)

撮影モデルのアルバイトをしたときの体験談。撮影場所は、とあるホテルの一室だった。その部屋には突き当りに大きな一枚の窓ガラスがあった。その窓を背景にして撮影を行ったあと、お風呂場で次の衣装に着替えている最中、隣の部屋から女性のいかがわしい声が聞こえてきた。部屋に戻って先ほど撮影した写真を見せてもらうと、そこにはある恐ろしいものが写り込んでいた。帰宅後、撮影したカメラマンから電話がかかってきて…。

『呪いのビデオ』(19分)

坂井さんというその男性は、彼がまだ高校生だったある日、自宅で何人かのクラスメイトと一緒に『呪いのビデオ』を鑑賞していた。すると、＂自称霊感がある＂友達の竹村くんが、突然大声をあげた。どうやら彼はビデオを通して、本来映るはずのない霊の姿を目撃してしまったらしい。その後、バイクで夜道を走行中に、竹村くんの姿を目にした坂井さんだったが…。想像を絶する＂呪い＂が、彼らを襲う。

『タクシー運転手』(5分)

タクシー運転手をしている彼女はその日、ある女性のお客さんを乗せた。運転しながら会話を弾ませるはずが、どうも話が噛み合わない。目的地まで着いたとき、女性の態度が一変した。突然、激怒しはじめたのだ。女性が怒った身の毛もよだつ恐ろしい理由とは…。

『理由』(7分)

Nさんは高校生のとき、修学旅行である観光スポットを訪れた。大海原が広がる自然豊かなその場所には、橋を一本渡ったところに小島があった。Nさんは友人たちとともにその橋を渡ろうとしたが、T君という友人だけが、不機嫌そうにそれを拒んだ。その夜、小島に来なかったT君に理由を尋ねたNさんだったが、T君は再び不機嫌になり、答えようとしない。翌日、もう一度T君に尋ねてみると、想像もしていなかった恐ろしい理由を語りはじめた。